ライフプランよりも大切な「身軽さ」とは何か / ハヤカワ五味×GOZEN布田対談（後編）

働きながら妊娠・出産と向き合う女性が増える一方で、多様化する生き方の道しるべはあまりにも少ない。2023年4月、フェムケアブランド「SOLUME（ソリューム）」は子育てと仕事の両立など、尽きない悩みや不安を抱える現代女性たちのために立ち上げられた。

掲げられたコンセプトは「妊娠と出産をもっとロジカルにする」こと。同ブランドを手掛ける人物こそ、現在、株式会社ユーグレナのブランドマネージャーであるハヤカワ五味だ。これまでにもランジェリーブランド「feast」、フェムテック事業「ILLUMINATE」など、多数の事業を世に送り出してきた実績を持つ。

Focus On×ソーシャルM＆A®︎ファームGOZENが送る連載「ソーシャルM＆Aという人生戦略」。第2弾インタビューとなる今回は、18歳で起業して以来、10年近くビジネスの最前線を走りつづけてきたハヤカワが見据える視線の先に迫る。（聞き手：GOZEN代表 布田尚大）

▼前編
IPOだけが素晴らしい起業じゃない / ハヤカワ五味×GOZEN布田対談
▼後編（本記事）
ライフプランよりも大切な「身軽さ」とは何か / ハヤカワ五味×GOZEN布田対談

半径5m以内の生存戦略

丁寧な味方選びのすすめ

布田尚大（以下、布田）：事業や経営について、よく相談されたりアドバイスすることってあったりしますか？

ハヤカワ五味（以下、ハヤカワ）：私もシードまでしかやったことがないのでそこまでの視点しかないのですが、やっぱり最初の資金調達をどういう風に進めていったらいいんだろうみたいな漠然としたところからの相談が多いですね。株主に関しては、特定の人が同じカテゴリ、競合になり得る分野で複数出資するということは考えづらいので、その一枠を誰が取るかという話があると思っていて。つまり、絶対に味方でいてほしい人は早い段階で決めて、早めに巻き込んだ方がいいということは結構言っています。

あとは、「この人はエンジェルやっているから頼む」というパターンも多いですが、そうではなくて一旦まっさらな状態で考えて、「ぶっちゃけこういう人に入ってほしいでしょう」みたいな話もするようにしていて。

たとえば、この人はおそらくエンジェルやっていないというケースでも、だいたいある程度の地位にいる人はお金を持っているので、おそらく本来はエンジェルとか何かしらの投資活動はやりたいはずなんですよ。そういう話が来ないから出していないだけで、そういう人に話に行った方がいいんじゃないかという話はしたりします。

布田：逆にこれだけは避けた方がいいみたいなことはありますか？

ハヤカワ：安易に株は出さない方がいいですよね。絶対に面倒くさいので。1番よくないと思ったのは共同創業で株を真っ二つにするのは本当にない。それこそどちらかが辞めた場合は株式を戻す契約にしていないと、無関係な人が株主にいるという状態になるじゃないですか。売りづらいとかもあるし、あとから組み直すのは面倒なので、株に関してはものすごく丁寧にやった方がいいと思います。

将来の仕事のための種まき

布田：今ユーグレナで展開されているブランド「SOLUME」のように、今後結婚、出産、子育てなど、いわゆるライフスタイルが変化する可能性もあるなかで、五味ちゃん自身のライフキャリアはどう考えていますか？

ハヤカワ：自分としては結局ダサいことをやりたくないという軸は変わらないので、ユーグレナの仲間としてやらせていただいている以上、ブランドがある程度軌道に乗るところまでは少なくともやりたいと思っているので、そこが当面の目標で。ある意味それ以降は考えないようにしているとも言えるかなと思います。

ただ、その一方で、自分で会社を経営していた時よりも情報が入りづらくなっていると感じていて。たとえば、今スタートアップ界隈でどういうことが起きているかとか、こういうジャンルは今調達しづらいとか、こんなスタートアップが出てきているらしいとか、結構意識的に拾わないと入ってこないんですね。

そうするとじゃあ仮に2年後なのか、5年後10年後なのか分からないですが、自分がまたスタートアップを起業するのか、もしくはほかの事業をやる場合でも、そういった情報をウォッチできていないと戻れないなと思うんですよ。その流れについていけないし、自分がどこに行くべきなのかも分からなくなると思っていて、そこはすごく意識しています。

そういった意味で知り合いの会社にAI系のビジネスアイデアを投げたり、場合によってはそれが実現して、じゃあそれはどういう数字が出るんだろうとか、ある意味おいしいところ取りの立ち回りをさせてもらっているかなと思っていて。それは今後の仕事に繋がるかもしれないし、繋がらないかもしれないという感じですね。

プラン通りにいかない人生に「身軽さ」を

布田：最後にもう少し中長期の視点から、こういう人生にしたいという思いなどがあれば教えてもらいたいと思います。

ハヤカワ：今、自分が女性のキャリアなどを取り上げるジャンルで事業をつくっているからこそ思うことなんですが、あまり先々のことを決めても分からないなと思っているんです。AIだってこんなに早く盛り上がるとは誰も思わなかったじゃないですか。ChatGPTが来るとも思ってもなかったし、たぶん想像以上にノリとバイブスだと思う（笑）。

その時これが来ているみたいなものって大事だし、逆にこれが今来ているから行くべきだという時に自分がすぐ動ける状態にはしておきたいなと思うんですね。それは身軽にしておくこともそうですし、知識を入れておくこともそうですし、重要なことって先々のキャリアをフィックスさせておくことではないんじゃないかなと思っています。

フェムケアブランド「SOLUME」では、妊娠や出産に関わるあらゆることを、テクノロジーと専門家の知見でロジカルにサポート。第１弾として、葉酸とその働きを助ける5種の栄養素を配合した栄養機能食品のゼリーを、2023年5月10日（水）に発売したほか、経験者の一人称の声と専門家視点の情報を元に、女性の悩みに寄り添った情報発信を目指す、「はたらく女性向け」の妊娠・出産を考えるメディア「SOLUME library」を展開する。

布田：今回「SOLUME」も妊娠と出産をもっとロジカルにできるというコンセプトを掲げているなかで、ロジカルって割と知識が入って動きやすくなる面もあれば、考え過ぎてもう解が出せないとか、動けなくなる場合もあると思うのですが、ノリやバイブスとロジカルのバランスが大事なんですかね？

ハヤカワ：難しいですよね。でも、結局周囲で楽しそうに生きている人、特に女性を見ていると、すごく賢くて知識もあるけれど、やっぱりいざという時は身軽なんですよね。そういう生き方がいいなと感じるし、自分もその方が生きやすいんだろうなと思って。

結局、妊娠出産という題材を扱うブランドで、今回発売する栄養機能食品ゼリーの成分のテーマでもあるんですが予定不調和的なんですね。自分は18歳くらいから起業して、受験も含めしっかり成果を上げてきたなかで思ったことが、これまでずっと努力したら報われるし、しっかりプランを組んで頑張ったら思った通りになるような人生を送ってきているんですね。だから、うまくいかなかった時も自分のプランが甘かったとかそういう話で自責的に捉えてきていたんですが、それって妊娠出産だと適用できないと思うんです。

そもそも相手がいないと成立しないし、妊娠自体もどれだけケアしたところでどうなるかは最後まで分からない。子どもの性格によって育てやすさも大きく変わるし、それだって選べるものじゃない。

自分もそうだったんですが、おそらく働く女性で今まで自分の人生をうまくコントロールして進めてこられたという意識が強い人こそ、なんでもそうできると思いやすい。でも、妊娠出産だけじゃなく、実はコントロールの効かない事象もあるんだと。たとえば、親の介護が必要になるかもしれないとか、自分が明日病気になるかもしれない。分からないからそういう前提でやることはやっておく。それ以上は誰のせいでもないこともあるし、どうにもできないこともあるという前提で、ほどほどにフットワーク軽く動ける方がいいのかなと。

布田：ある種「半径5m以内の生存戦略」というか、先まで見通せないことのなかでも1番に出てくるものが妊娠出産でもあると。

ハヤカワ：そうですね。たとえば身軽さって何かと言うと、会社を辞めても食べていける自信だったり、それはビジネススキルだったり、場合によっては金銭的な状況になるかもしれないし、健康かもしれない。いろいろな身軽さがあるじゃないですか。それを持っておくことが1番生きやすいし、飛び込めるし、誰かに依存することもなく切り替えやすい。その身軽さが1番重要かなと思うんです。

だから、自分としてはもともと比較的身軽な方ではあるんですが、仕事柄、自分で事業を立ち上げてきたから割とやることも多い。でも、さらにそこで自分の強みをもう少し磨いておけば、より身軽かもしれないという思いで今は生きています。

2023.9.28

取材・布田尚大／ソーシャルM＆A®️ファーム GOZEN

文・引田有佳／Focus On編集部

▼前編
IPOだけが素晴らしい起業じゃない / ハヤカワ五味×GOZEN布田対談
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ライフプランよりも大切な「身軽さ」とは何か / ハヤカワ五味×GOZEN布田対談

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